大陸棚セミナー
「大陸棚延長と海洋政策―勧告に基づく限界設定の先例に学ぶ―」
開催報告(2011年2月9日)
1. はじめに
国連海洋法条約に基づき200海里以遠に大陸棚を設定できれば、海底資源に対する沿岸国の管轄権の及ぶ範囲が拡大するため、大陸棚を200海里以遠に延長することは沿岸国にとって重要な意味を持ちます。このため、世界の多くの沿岸国が同条約に基づき大陸棚延長申請を行っており、2011年3月1日現在55件の申請が大陸棚限界委員会に提出され、このうち11件について委員会の勧告が発出されています。沿岸国は、勧告に基づき自国の大陸棚の限界を設定し、その限界が表示された海図を国連事務総長に寄託することによって、大陸棚限界設定に必要な手続を完了することになりますが、この手続を完了した沿岸国は、メキシコとアイルランドのみです。
これまでは、大陸棚限界委員会に申請を提出するにはどのような準備が必要かといった点や、大陸棚限界委員会における審査プロセスはいかなるものかという点に焦点が当てられてきましたが、今後、多くの沿岸国の申請に対する勧告が順次出されていくことから、委員会の勧告を受領した後の一連のプロセスについて理解を深めると同時に、各国がどのような海洋政策に基づき大陸棚延長を行ったのかについて知ることが重要と考え、当財団では標記セミナーを開催致しました。
本セミナーでは林司宣早稲田大学名誉教授に座長を務めていただきました。まず、兼原敦子上智大学教授より、国連海洋法条約の下で委員会の勧告はいかなる法的地位を有するのか、大陸棚限界設定を行う際の沿岸国の権利の性質はいかなるものかといった点を踏まえ、委員会の発出した勧告について沿岸国が異なる見解を有する場合や、勧告に基づき行われる大陸棚限界設定が他国との境界画定紛争に関係する場合、沿岸国はどのような行為をとりうるのかという問題について、ご講演を賜りました。
次に、メキシコ外務省科学アドバイザー、大陸棚延長コンサルタント及び大陸棚限界委員会委員を務められているガロ・カレラ氏より、以下の概要のご講演を賜りました。
- メキシコ湾西エリアについては、米国との境界画定を行った上で、申請準備のための各種のデータ収集を行い、部分申請として大陸棚延長申請を委員会に提出した。
- 委員会が審査に要した時間は実質的に1年であり、申請提出から勧告発出までにかかった時間としては、これまでのところ最速である。
- 2009年3月に勧告が発出された後、必要な国内措置を迅速にとり勧告に基づく大陸棚限界設定を行った上で、同年5月に国連事務総長に限界が表示された海図等を提出した。
- 200海里以内の大陸棚に適用されるすべての国内法が、200海里を超える大陸棚にも、準用して適用される。
- 今後、メキシコ湾西エリアにおける200海里を超える大陸棚の開発に際しては、持続可能な開発が優先的に考慮される。また、投資及び技術面での進展が、今後の開発にとって引き続き課題である。
続いて、アイルランド通信・エネルギー・天然資源省石油部門石油探査専門官及び大陸棚限界委員会委員を務められているピーター・クロッカー氏より、以下の概要のご講演を賜りました。
- アイルランドは、近隣諸国との境界画定紛争のない、ポーキュパイン深海平原エリアについて、2005年5月に部分申請を提出した。これがアイルランドの行った最初の大陸棚限界申請であり、その後、アイルランドは、4カ国(フランス、アイルランド、スペイン及び英国)共同申請及びハットン・ロコール海域についての部分申請をそれぞれ提出している。
- 2007年4月に大陸棚限界委員会より勧告が発出され、これを受けて、必要な国内措置を迅速にとり勧告に基づく大陸棚限界設定を行った上で、2009年3月に国連事務総長に限界が表示された海図等を提出した。勧告に基づく限界設定としては、メキシコに次いで、2番目の事例であった。
- 200海里を超える大陸棚における探査・開発活動を規制するにあたっては、国連海洋法条約第82条の利益配分制度に基づく支払と海洋環境保護について検討しなければならない。
2. 実施概要
| 開催日時 | 平成23年2月9日(水) 13:30−17:00 (セミナー) 17:15-19:00 (レセプション) |
| 開催場所 | 日本財団ビル2階 大会議室(東京都港区赤坂1−2−2) |
| 主催 | 海洋政策研究財団 |
| 助成 | 日本財団 |
| 参加者 | 約140名 |
プログラム
| 13:30-13:40 | 開会の辞 | 秋山 昌廣 海洋政策研究財団会長 | |
| 13:40-13:45 | 座長挨拶・講演者紹介 | ||
| 座長 | 林 司宣 早稲田大学名誉教授 | ||
| 13:45-14:25 | 200海里を超える大陸棚制度に基づく沿岸国の権利 [講演原稿 |
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| 講演者 | 兼原 敦子 上智大学教授 | ||
| 14:25-14:40 | 休憩 | ||
| 14:40-14:45 | 講演者紹介 | ||
| 座長 | 林 司宣 早稲田大学名誉教授 | ||
| 14:45-15:25 | メキシコの大陸棚限界設定の経験−メキシコ湾西エリアを中心に− [講演原稿 |
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| 講演者 | ガロ・カレラ氏 メキシコ外務省科学アドバイザー 大陸棚延長に関するコンサルタント 大陸棚限界委員会委員 |
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| 15:25-16:05 | ポーキュパイン深海平原における大陸棚の外側の限界までの アイルランドの管轄権の拡張―現在までの進展、論点及び経験― [講演原稿 |
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| 講演者 | ピーター・クロッカー氏 アイルランド通信・エネルギー・天然資源省石油部門石油探査専門官 大陸棚限界委員会委員 |
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| 16:05-16:20 | 休憩 | ||
| 16:20-17:00 | 質疑応答・議論 | ||
| 17:00 | 閉会 | ||
| 17:15-19:00 | レセプション | ||
*当財団では、ボートレース交付金による日本財団の助成金を受けて「大陸棚の延長に伴う課題の調査研究」事業を実施しておりますが、本セミナーはその事業の一環として開催したものです。