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講演会「大陸棚限界拡張における問題〜海底の高まりと海洋海嶺‐国連海洋法条約第76条のポーカーゲームのワイルドカード〜」の開催(2007年3月2日)

1. はじめに

   1994年に発効した国連海洋法条約によりますと、大陸縁辺部の外縁が200海里を超えて延びている場合には、大陸棚を最大350海里まで延伸することができると定められていますが、そのためには国連に設置されている大陸棚限界委員会に科学的データを添えて2009年5月までに申請する必要があります。

   これまでに、ロシア、ブラジル、オーストラリア、アイルランド、ニュージーランド及びノルウェーの6カ国が申請し、またフランス、アイルランド、スペイン、英国が共同申請をしており、我が国をはじめとする多くの沿岸国にとってその審査動向が注目されるところであります。 元カナダ地質調査所研究員であり、元海洋法諮問委員会(ABLOS)議長として活躍されていたロン・マクナブ氏は、カナダの大陸棚外縁画定問題において重要な役割を果たされるとともに、各種国際会議の委員や講師をされるなど、各国の大陸棚拡張問題に精通されております。このたび、同氏が日本に立ち寄られる機会を利用して、海事関係者や一般の方々を対象に講演会「大陸棚限界拡張申請‐過去から現在‐」を開催し(ウエブ参照)、引き続き、大陸棚関係者を対象として標記講演会を開催しました。

   国連海洋法条約第76条に基づいて大陸棚を延伸する場合の問題点の一つとして「海嶺問題」があります。すなわち、「海底の高まり」か「海底海嶺」か「海洋海嶺」かによって、またそれらが「領土からの自然の延長」かによって大陸棚を延伸できる範囲が左右されます。

   本講演会では、この「海嶺問題」ついて具体的な事例を紹介するとともに、その問題点と対策について述べ、参加者との間で議論が行われました。


2. 実施概要

開催日時:
平成19年3月2日(木) 13:30〜15:00
開催場所:
海洋船舶ビル 10階会議室(東京都港区虎ノ門1−15−16)
主   催:
海洋政策研究財団
講   師:
ロン・マクナブ氏(Mr. Ron Macnab)
元カナダ地質調査所研究員、元海洋法諮問委員会(ABLOS:IHO/IAG/ IOC Advisory Board on the Law of the Sea)議長
講演題目:
海底の高まりと海洋海嶺
‐国連海洋法条約第76条のポーカーゲームのワイルドカード‐

3. 講演概要

   ポーカーゲームにおけるワイルドカードとは、他のカードの代用として使える万能カードのことで、そのカードを持っている人は極めて有利になる。これに対して、国連海洋法条約第76条のゲームにおけるワイルドカードとは、申請国が海底の特徴として関連付けた解釈に対して、大陸棚限界委員会(CLCS)の委員が必ずしも賛成するとは限らないことを意味するもので、逆の意味でのワイルドカードである。

   講演では、先ず、海底の高まりの具体的な事例について説明が行われた。

アイスランドのレイクジェーンズ海嶺(Reykjanes Ridge)
   中央海嶺であると同時に、アイスランドの自然の延長でもある。将来の申請において、例えばアイスランドが自然の延長であることを主張しても、CLCSが海洋海嶺であると主張した場合、これはワイルドカードに成り得る。
北極海の海底の高まり(Lomonosov and Alpha-Mendeleev Ridges)
   ロシアの申請の際に問題となった海嶺であり、CLCSでの審査にあたった委員は、地形学的な自然の延長でないと解釈した。ロシアが自然の延長を主張したが、CLCSは同意しなかった。結局、ロシアはこの海域の大規模な調査をすることになった。この地域は、氷の下の調査となり、労力を要すると同時に膨大な資金が必要となる。 デンマークとカナダも、この地域で同様の問題を抱えている。
その他
   Ninetyeast and 85 East Ridges、Colon, Carnegie, and Cocos Ridges、Small Ridge off Angolan Margin、Orphan Knoll and Newfoundland Ridge、South Greenland Ridge、Mariana Ridges

   CLCSは、海嶺についてのガイドラインを作成しようと試みたが、多種多様であるため見解を統一することができず、ケースバイケースで審査することになった。つまり、申請国は手持ちのワイルドカードをCLCSに渡して、CLCSがそのカードの価値を判断することになった。また、CLCS内での議論は公表されないため、CLCSが一貫した理論の下で判断しているかどうかはわからない。他の沿岸国が、筋の通った海嶺の主張をしているか判断できないため、自らの申請の準備をする際に、他国の事例を参考にすることができない。

   ワイルドカードを扱うには、次の点に注意する必要がある。

有利な事例であることを確実にする。
あらゆる情報を揃え、議論のできる体制を準備しておく。
類似している状況にある他の国に情報を求める。
地質学・地形学的に類似している近隣諸国と提携する。
申請に全てのデータと解釈を添える。
CLCSに対して明確に説明し、CLCSが「他の考え方をしないように」自己の立場を防御する。

4. 配付資料

   ・パワーポイント資料 PDF(508KB)

[注] 海嶺問題

  国連海洋法条約76条において、大陸棚の定義を

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領海の外側の海底であって、領土の自然の延長をたどって大陸縁辺部の外縁までの海底及びその下。
?
大陸縁辺部の外縁が200海里を超えない場合には、領海の外側であって、領海基線から200海里までの海底及びその下。
とし、大陸縁辺部の外縁の具体的な位置を決める方法とともに、次のような制限条項が設けられている。
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領海基線から350海里を超えてはならない。
?
2500m等深線から100海里を超えてはならない。
   更に、76条では、「大洋底及び海洋海嶺は大陸棚をもたない」とし、「海底海嶺では大陸棚を伸ばせる場合でも350海里を超えてはならない。但し、海台、海膨、キャップ、堆及び海脚のような大陸縁辺部の自然の構成要素である海底の高まりについては、適用しない」となっている。
   すなわち、大陸棚を延伸する場合には、「領土からの自然の延長」かによって、また「海底の高まり」か「海底海嶺」か「海洋海嶺」かによって、大陸棚を延伸できる範囲が変わってくることになる。しかし、これらの区別について、国連海洋法条約や科学的・技術的ガイドラインでは明確にされておらず、「陸からの自然の延長」上にある「海底の高まり」として大陸棚の延伸を申請しても、CLCSが審査でどのように判断するかわからない。
   ポーカーゲームにおけるワイルドカードとは、他のカードの代用として使える万能カードのことで、そのカードを持っている人は極めて有利になる。
   これに対して、上に述べた「海嶺問題」は、大陸棚限界委員会(CLCS)がどのように判断するかによって大陸棚の延伸できる範囲が左右されるため、逆の意味での、国連海洋法条約第76条におけるワイルドカードといえる。

*当財団では、競艇交付金による日本財団の助成金を受けて「大陸棚の限界拡張に係る支援」事業を実施しておりますが、本セミナーはその一環として開催したものです。

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