これまでの主要な調査・研究開発例
最近、海洋をめぐる状況が大きく変わってきました。従来までの造船・海洋といった産業振興から広範囲な視点で海洋を取り上げ、技術開発のみでなく政策支援や国際協調など、ソフト・ハード両面にまたがって国際的な諸問題に対応する必要が高まっています。当財団は、これまでわが国の海運・造船・造船関連工業の発展に貢献してきましたが、これらに加え、最近は多岐にわたる海洋分野の取り組みを強化しはじめています。その成果は国の政策支援や国際協力などに貢献しつつあります。これまでの技術開発や調査研究からいくつかピックアップしました。
国際海峡利用と諸国の協力体制に関する研究調査
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| マラッカ海峡を航行する船舶 |
近年、世界経済の発展とグローバル化にともない海上交通量が増大する一方、船舶の航行安全を脅かす海賊事件も多発し、国際海峡における安全確保が喫緊の課題となっています。そこで、わが国をはじめ中国、韓国等、東アジアの国々にとっても重要な海上輸送ルートであるマラッカ・シンガポール海峡の航行船舶の安全について、利用国と沿岸国の国際協力の仕組みづくりの研究に取り組むとともに、国際海事機関(IMO)が進める海洋電子ハイウェイ計画等に関する調査研究を行いました。
2007年9月にはマラッカ・シンガポール海峡の航行安全等に関する「協力メカニズム」が合意され、2008年4月には航行援助施設基金が設立されました。これには、日本財団のイニシアチブにより海峡利用国とともに海運産業からも企業の社会的責任(CSR)の考え方に基づく資金的支援が行われます。この基金によって、海峡内に設置された主要航行援助施設の維持・更新が行われるもので、国連海洋法条約に基づく世界で初めての利用国及び利用者の協力の実現です。
地球未来への企画“海を護る”東京宣言
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| "海を護る"国際会議 |
海洋の平和維持と自然環境・資源の保護は、21世紀の最大の課題の一つです。このような認識に立ち、軍事を中心とした従来の安全保障の概念を見直し、海洋の平和維持と海洋環境の視点を包含した総合的な海洋安全保障の概念“海を護る”を提唱し、2002年から3カ年計画でアジア太平洋諸国や国際機関から著名な専門家を招聘して国際会議を開催しました。“海を護る”概念の明確化とそれを実現するための方策について活発な議論を行い、その成果として「東京宣言」を採択しました。
宣言では、“海を護る”実現のため、国際的な海洋シンクタンクの設立など10項目にわたる具体的措置を講じることを提言しています。また、提言を実行に移す政策提言グループの設置に合意し、国内外へ情報発信したところ、国際的に大きな反響を呼び起こしました。
排他的経済水域における航行および上空飛行に係わる指針
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| 「排他的経済水域における航行および上空飛行に係わる指針」 |
東シナ海の排他的経済水域境界付近における海底資源開発を巡る日中の対立や、日本の排他的経済水域における中国による無通報の海洋調査活動など、今日、排他的経済水域における国家活動を巡っての国際紛争が世界各所で顕在化しており、武力紛争の事態を招くことが危惧される状態にあります。現実に、2001年には、海南島沖の中国の排他的経済水域内で監視活動するアメリカ海軍情報収集機と中国の戦闘機の衝突事故が生じていること、同年12月に東シナ海で海上保安庁巡視船等による北朝鮮工作船に対する銃撃・沈没事案が発生したこと、そしてこれが中国の排他的経済水域内で生じたことに対し中国から抗議があったことなど、記憶に新しいところです。このような事案から思わぬ偶発事故が生じないようにするためには、排他的経済水域における航行と上空飛行に係わる国際的な指針が是非とも必要となっています。当財団では、2003年から2005年にかけて、「排他的経済水域の法的地位−課題と対応−」と題する国際会議を開催し、参加者の合意を得て「排他的経済水域における航行および上空飛行に係わる指針」を策定しました。
海洋教育の普及に関する調査研究
学校教育の現場において海に関する学習の機会が少なく、海洋教育の拡大普及を望む声が高まっています。これまでも多くの団体や研究機関、企業、NPOなどが個別に学習支援活動を実施してきましたが、必ずしも順調に進んでいるとはいえません。
当財団では、海の学習を取り上げやすくする研究を行い、現行の教育システムにおける「教育現場と外部機関との連携及び支援体制のあり方」に関する課題を明らかにし、さらに初等教育で海洋教育を普及・浸透させる総合的支援体制の構築に向け、手法開発と環境作りに取り組んできました。
なお、この事業の成果の一部を取りまとめ、小学校の授業にも使える「海のトリビア」「続・海のトリビア」を発行し、海洋教育の一助となる書籍「BE-PAL 海遊び入門」の企画に参加しました。
海洋及び沿岸域のゴミ問題に関する調査研究
海洋を漂流するゴミあるいは沿岸に漂着する海洋ゴミは、自然の景観を損ない、また生態系に影響を与えるのみならず、国際的な問題にまで発展しています。これを解決するには、陸域・海域の管理体制の一元化をはじめ、官民が連携して地域に密着したゴミ問題に関する社会活動システムが必要となっています。
当財団では、全国13カ所の地域の人々と協力し、海浜清掃に環境チケット及び海の工作教室を取り入れた「地域の海洋環境貢献活動システム」の普及を進めてきました。2005年2月には全国9カ所から地域活動に携わってきた人々が東京に参集して交流会議を開催し、お互いの事例発表や意見交換を行いました。
今後、当財団がモデルとして提示した活動システムが、他地域に広がることが期待されます。
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| 砂浜に散乱する海洋ゴミ | 海浜清掃後の海の工作教室 |
北極海航路に関連する壮大な国際プロジェクト
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| 北極海を航行中の砕氷船 |
北極海航路に関する代表的なプロジェクトは、1993年から開始した国際北極海航路計画(INSROP)です。欧州と極東を結ぶ海上ルートの中で、既存の南回りより北極海航路の方が距離にして約60%に短縮できる経済的メリットがあり、ノルウェーのフリチョフ・ナンセン研究所、ロシアの中央船舶海洋設計研究所を交えた3ヶ国プロジェクトとして実施してきました。このINSROPプロジェクトと並行して実施した国内プロジェクトが「JANSROP(北極海関連事業)」です。「JANSROP-II」では、北極海航路を利用してロシア極東の天然資源をわが国に輸送するシステムとともに、寒冷海域であるオホーツク海の航行安全と海洋環境保護のあり方を検討しました。その研究成果として、極東ロシア地域の豊かなエネルギー、鉱物、森林、水産の諸資源並びに地勢データを数値化した、世界で初めての地理情報システム(JANSROP-GIS)を取りまとめ、また、オホーツク海の海洋環境保護に関する海洋レジーム構想をとりまとめました。
生産システムの革新―「高度造船CIM」と「造舶Web」
わが国造船業の国際競争力を高めるため、主要各社と共同で「高度造船CIM」の開発に取り組みました。これは船舶の設計から建造にいたるあらゆる情報をコンピュータ上で表現できるシステムで、情報の共有化が図られ、生産効率を飛躍的に高めます。
当財団では1989年から10年間にわたって取り組み、プロダクトモデルを構築し、その成果は、すでに各造船所の自動化や生産現場のシステム化に活かされています。
この後、インターネットを介して造船会社と舶用工業各社間での情報交換を支援するツールである造舶Webの開発に取り組みました。その結果、2001年にはこのツールを実運用するために、造船会社約20社、舶用機器メーカー約70社が参加する会社「造舶Web」が設立され、実用化が進んでいます。

高度造船CIMの概念図
海上における油流出事故対策に関連した調査研究
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| 2002年スペイン沖で起きた「プレスティージ」号の海難事故 (写真提供:共同通信社) |
タンカーの海難事故による海洋汚染が相次ぐ中で、当財団は油を使用できる世界でもユニークな試験水槽をもつ筑波研究所での実験を通じ、海洋汚染防止に積極的な役割を果たしました。
とくに1980年代には、オイルフェンスや油回収装置等の油濁防除資機材の型式承認や開発試験の実施、あるいはタンカーの油流出防止構造(ダブルハル及びミッドデッキ)に関する実験に大きく寄与したほか、風波や潮流の中での流出油の拡散・漂流・風化に関するシミュレーションプログラムやデータは、国内だけでなく国際的にも評価され、現在でも実際の油流出事故対策に生かされています。
船舶から排出される温室効果ガス(CO2等)の削減に関する調査研究
1997年12月の地球温暖化防止京都会議において、温室効果ガス(CO2等)削減について基本合意がなされたものの、船舶から発生する温室効果ガスの削減策については、便宜置籍船制度など船舶運航の特殊性などからIMO(国際海事機関)で検討されることとなりました。当財団では船舶から排出されるCO2やメタン(CH4)亜酸化窒素(N2O)などの排出量を調査するとともに、削減策についての技術的、社会経済的な観点を含めた検討結果をIMOなど国際機関に提言し、国際ルールづくりに大きな役割を果たしました。

超電導電磁推進船
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| 試運転中の「ヤマト-1」 |
1980年代の日本は、長引く海運不況の中、船舶の建造量は世界の半分近いシェアを持ちながら、エンジン開発等では、海外のメーカーの後塵を拝しがちな残念な状況でした。
そのような状況の中「不振の続く造船業界の若い技術者たちに夢を育てて貰いたい」という想いから、本財団は超電導という先端技術を取り入れた、スクリュープロペラのない未来の船の開発を思い立ちました。
それが超電導電磁推進船「ヤマト-1」の開発です。
開発研究の過程で最大のネックとなったのが、超電導磁石を用いた推進装置の大型化・軽量化の問題でした。より大型で、より軽く、より性能のよい超電導電磁石を追及する研究者や科学者のたゆみない努力の結果、1992年に世界初となる「ヤマト-1」の海上航走が実現しました。
「ヤマト-1」の開発研究では、新たな超電導技術の応用に道を拓く多くの貴重な技術的成果を得ました。
内航船舶の近代化
船内作業を著しく軽減し、働き易い魅力を持った内航近代化船の実現に向けて、ワンマンコントロールが可能な内航船の操舵室及び船員室の実物大模型を製作し、全国の海運関係者等に対して展示しました。また、総トン数497トンの内航、鋼材運搬船にワンマンコントロールによる統合操船システム、快適居住設備、モジュール型機関室、バウスラスターの補助推進機能などの画期的な設備を装備して実船航海を行いました。これにより、内航近代化船を評価をしました。
革新的な高効率天然ガスエンジンシステム開発
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| 天然ガスエンジンシステム |
地球温暖化の解決と有害排気物質の削減策として、石油から天然ガスへのエネルギー転換が期待されています。当財団では、平成10年度から、高効率かつ排ガス対策にも優れた全く新しい天然ガスエンジンシステムの研究開発に取り組んできました。この開発では、世界で初めて、原燃料の天然ガスを高温の排気ガス熱と触媒によって水素と一酸化炭素に改質するとともに、改質ガスによる運転を行いました。今後、実用化が進み、この革新的なエンジンシステムが地球環境問題の解決の一助となることを期待しています。
船舶起源の粒子状物質(PM)の環境影響に関する調査研究
当財団では、船舶起因の粒子状物質(Particulate Matter:PM)の環境影響について、現地測定データと数値シミュレーションの両面から調査・解析を行い、有用かつ貴重なデータを得るとともに、地域的特長について海外の科学者と情報交換を行ってきました。これらの活動を通じて、船舶からのPMに関しては、ガスとして排出された窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)などが大気中で光化学反応により粒子化する二次粒子の影響が非常に大きく、燃料中の硫黄分を削減することが間接的に環境への影響を少なくする効果があるとの国際的な認識と理解を得ることができました。
今後、規制海域の設定が進めば、従来未規制であった船舶からのPMに関して大きな改善をもたらすことが期待できます。








