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第40号 2002.04.05 発行

旗国の監査プログラムの創設

国土交通省海事局安全基準課専門官◆山田浩之

船舶の安全と海洋環境の保全に責任をもつべき旗国に対する監査が議論されている。条約等の実施が確実に行われているかどうかを監査しようというもので、まずはボランタリーベースでの監査から開始することを目指している。

はじめに

本年1月、わが国主催により、主要国の交通担当大臣を招き、「環境にやさしい交通」をメインテーマとして、東京で「交通に関する大臣会合」(以下、大臣会合)が開催され、なかでも海事関係は、国際的取り組みが重要な分野であるとの認識が高く、具体的な行動を起こすための議論が行われ、大臣共同声明文とともに付属する アクションプラン(行動計画) が採択されました。本稿では、アクションプラン中最も重要な「旗国の条約実施に対するIMO監査プログラムの創設」構想について紹介します。

旗国の監査

海上安全・海洋環境の向上を目指すには、旗国による条約等の確実な実施が最も重要ですが、旗国の実施を担保するための強制的な枠組みについては、IMO(国際海事機関)において旗国の主権を侵害するものとして否定された経緯があります。一方、航空の世界では、ICAO(国際民間航空機関)による監査がすでに実施されており、これはICAOとメンバー各国との同意に基づき実施されているため主権侵害の問題を惹起しないところ、同様のスキームを海事の世界にも導入しようというのが「旗国の監査」構想で、当面は、ボランタリーベースの監査スキームを想定しています。

具体的には、海上人命安全条約(SOLAS)、海洋汚染防止条約(MARPOL)、船員の訓練・資格証明・当直基準条約(STCW)の基本的3条約について、旗国が確実に国内法制化し、かつ、登録する船舶に対して検査の実施などにより確実に条約の基準を担保しているかどうかを、専門家数名からなる監査チームが実際に当該旗国を訪問し、チェックするというスキームです。海事分野では、旗国が船級協会などの認定機関に検査権限を委任しているのが通常なので、このような認定機関に対する旗国の監督も監査の対象となります。

旗国の監査をIMOで開始するには、まず、IMOでの合意を得る必要がありますが、近年、便宜置籍国等の発言力が強く、彼らは、自国の海事当局が直接監査を受ける新たなスキームを必ずしも歓迎していないのが実情です。今後は、大臣会合参加国に加え、非参加国でも趣旨に合意する国があれば参加してもらい、基本スキームを検討し、今年の前半には、旗国の監査導入に関する共同提案をIMOに対して行う予定です。IMOでの合意が得られれば、監査スキームの詳細を検討し、それを踏まえ数年のうちには、ボランタリーベースで監査を開始し、最終的にはICAOのように全加盟国に広げることができればと考えています。

おわりに

海上安全と海洋環境、いいかえれば安全で青い海を実現するには、国による基準の強制に加え、海運業界による自主的な努力が不可欠です。より具体的に言えば、国際基準の実施を担保するための方策、特に、旗国に対する監査の実施等に加え、海運業界の自主努力を引き出すためのインセンティヴの付与、その基礎となるデータの公表などの施策が挙げられます。

今後、サブスタンダード船を排除し、クオリティーシッピングを達成するため、以上のような種々の政策の融合・最適化が必要で、今般の大臣会合はそのための第一段階であり、これを弾みに、政策を展開していくことが重要であると考えています。(了)

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